青色

この記事では、以下の内容について解説しています。


  • はじめに
  • 取消事由(所得税法150条1項各号及び法人税法127条1項各号)
  • 取消の効果
  • 裁判例の紹介

はじめに

税務署長は、青色申告の承認を受けた者について、以下の一定の事実が存在する場合には、その承認を取り消すことができます。

これにより、納税者は、上記の特典を受けられなくなり、大きな不利益を受けます。
どのような場合に取り消されてしまうのか、裁判例も踏まえて紹介します。

取消事由(所得税法150条1項各号及び法人税法127条1項各号)

法律では、以下の場合に青色申告が取り消されるとされています。

  1. 簿書類の備付け、記録又は保存が税務省令に従って行われていないとき
  2. その年における帳簿書類について税務署長の指示に従わなかったとき
  3. その年における帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装して記載し、その他記載全体について真実性を疑うに足りる相当な理由があるとき
  4. 申告書を提出期限までに提出しなかったこと(法人税法のみ)
  5. 連結納税の承認取消(法人税法のみ)

取消の効果

提出した申告書は青色申告書以外の申告書とみなされ、その年以降の承認が取り消されます。

なお、青色申告の承認を取り消す処分を行うに当たって、税務署長は、書面により、かつその書面に、取消の処分の原因となった事実がどの規定や理由によるのかを附記しなければならないとされています(理由附記)。

裁判例の紹介

実際に、どのような場合に青色申告の承認が取り消されたのか、あるいは承認の取消が認められないのか(税務当局の処分が違法とされたのか)、いくつかの裁判例を紹介します。

帳簿書類の備付け、記録又は保存が税務省令に従って行われていないときについて

これには、単に物理的に帳簿書類が存在することのみならず、税務職員に提示することも含まれます。

したがって、正当な理由がないのに提示を拒否することにより、青色申告の取消事由とされています。

しかし、提示を拒否したからといって、直ちに取消事由になるとは限りません。

税務当局も、平成12年7月3日付「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」において、「帳簿書類の提示がない場合には、青色申告の承認の取消事由に該当する旨を告げて、帳簿書類を提示して調査に応ずるよう再三再四その説得に努める。この場合、調査対象者に対する説明等の応答の経過は、詳細に記録しておくことに留意する」と記載されており、提示がないから即取消とはしていません。

以下、実際に提示を拒否しても、青色申告の承認の取消が認められない事例を紹介します。

•東京地裁平成3年1月31日判決
•京都地裁平成6年11月7日判決
•松山地裁平成14年3月22日判決

東京地裁 平成3年1月31日判決

まず、この判決では、「そもそも青色申告制度は、納税義務者が自己の記録、保存している正確な帳簿書類を基礎として納税申告を行うことを奨励することにより、申告納税制度が適正に機能することを目的とする制度であるから、納税義務者の帳簿書類の備付け、記録又は保存が正しく行われているとともに、その点を税務当局が的確に確認できるということが、その制度の当然の前提となっているものと考えられる」とし、たとえ帳簿書類が客観的に正しく備付け等されているとしても、正当な理由なしに税務当局への提示を拒否した場合には、青色申告の取消事由になるとしています。

もっとも、この裁判例では、「納税義務者の帳簿書類の提示拒否の事実の有無は、一定の時点においてのみ判定されるべきものではなく、税務当局の行う調査の全過程を通じて、税務当局側が帳簿の備付け状況等を確認するために社会通念上当然に要求される程度の努力を行ったにもかかわらず、その確認を行うことが客観的にみてできなかったと考えられる場合に、右のような取消事由の存在が肯定されるものと考えるのが相当」としています。

つまり、裁判所は、税務当局側へも、確認に努力を求めているのです。

この裁判例では、納税者側が、事務員が税務当局の求めに応じて帳簿書類の入ったダンボール箱からその一部を取り出して机の上に置く等して、調査に応じる態度を示していたこと等を理由に、税務当局側が、短時間でその場から退去することなくそのまま調査を続けていれば、所要の帳簿書類の備付け等が正しく行われているか否かを確認できたのではないかと考え、税務当局の青色申告取消処分を違法としています。

京都地裁 平成6年11月7日判決

この裁判例における納税者は、多数の個人商店から構成される企業組合です。

税務当局の11回にわたる税務調査のうち、1回目から7回目まで、納税者は、税務当局から提示を求められた帳簿書類を提示していました。

また、第10回目、第11回目の調査の時期は、納税者の繁忙期なのに、税務当局が、納税者に事前の連絡なく、5分から10分と悲常に短時間しか臨場しませんでした。

そして、第11回目の臨場の翌日には青色申告取消処分がなされました。

この事案で、裁判所は、税務当局が本件調査の全過程において、もう少し納税者に配慮して調査を継続すれば、必要な帳簿書類の全ての提示を受け、また、帳簿書類の備付け等、不備、不正の有無について確認し得たものと推認できたとして、税務当局の青色申告取消処分を違法と判断しました。

松山地裁 平成14年3月22日判決

この裁判例で、裁判所は、税務当局が納税者側の立会いの排除に拘泥して本件調査を進めず、最終的に本件調査を打ち切ったことは、合理的な判断に基づくものであったとは認め難く、納税者は正当な理由なく帳簿書類の提示要求を拒否したものではないとして、青色申告承認取消処分は違法であると判断しました。

その年における帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装して記載し、その他記載全体について真実性を疑うに足りる相当な理由があるときについて

この「記載全体についてその真実性を疑うに足りる相当な理由があるとき」の意味について、裁判例では、仮に隠蔽・仮装が認められなくても、帳簿から算出される所得率が一般所得標準率に比し著しく過少であるとか(高松高等裁判所昭和34年11月5日判決)、帳簿の随所に脱洩(だつえい)や過誤がある(大分地方裁判所昭和36年12月15日判決)など、帳簿全体が信頼性に欠ける場合であると解されています。