この記事では、以下の内容について解説しています。
- 商品引き上げ
商品引き上げ
商品引き上げによる債権回収とは、取引先に売った自社商品を回収するという単純な手法です。
ただし、一度売った商品ですから、相手に断らずに勝手に商品を持っていくことは窃盗罪になります。
また、相手の会社や倉庫に無断で入れば不法侵入(建造物侵入罪)になります。
ですから、きちんと手続を踏んで行う必要があります。
商品を引き上げる場合は、まず、契約の解除をすることで、売買契約を白紙に戻します。
その上で、商品を引き上げることについて、債務者から同意書または承諾書をとります。
引き上げ時は、債務者または債務者会社の担当者や親族などに立ち会って貰うことです。
以上の通り、商品引き上げという行為自体は単純なのですが、実は、簡単には行かないのが実情なのです。
しかも、債務者の承諾を得るには、相当な強い交渉と意思が要求されるはずです。
ここまでの手続が踏めない場合は、裁判所の力を借りて、差押により回収するしかありません。
また、契約解除の他、改めてその他社の商品の売買契約(債務者から商品を売って貰う契約)を締結する方法があります。
その上で、その商品を持ち帰り換価します。
債務者に対する商品購入代金は、自分の債権と相殺します。
これ以外にも、他社商品や価値のある動産や不動産などから回収する手法として、代物弁済による回収手法もあります。
債務者が借金を払えない場合に、債権者の同意を得て、他のものに代えて弁済するという方法です。
代物弁済が実行されると、通常は、その債権は消滅してしまうので、もし、代替物の価値(換価した額)が債権額に満たない場合は、一部の債権についてのみ代物弁済契約を締結し、残った債権額を確認しておく必要があります。
また、逆に債権額を大幅に上回る代物弁済を受けた場合は、暴利行為となり無効となってしまう危険性があるので、差額は債務者に返還するなどの清算処理をする必要があります。
自社商品にせよ、他社商品にせよ、債務者の協力なしには、商品の引き上げは困難です。
逆に、債務者の協力が得られる場合は、積極的にこの方法を活用することで、いち早く債権回収が成功します。
尚、債務者が破産宣告した場合は、後で破産管財人から商品の返品を求められる(否認権)場合がありますので注意が必要です。