契約社員

有期労働契約でも、自由に更新拒否はできません

期間を定め労働契約を締結した場合,期間が過ぎると契約は終了するので,原則として、使用者は自由に更新を拒否することができるのが原則です。

しかし、期間の定めのある労働契約でも、自由に更新拒否ができない場合があります。

つまり、期間の定めのない労働契約における解雇の際に適用される解雇権濫用法理(労働契約法16条)が類推適用される場合です。

その場合とは、

  1. 実質的に期間の定めのない労働契約と異ならないとき
  2. 実質的に期間の定めのない労働契約と同視できない場合でも,雇用が継続すると労働者が期待することが合理的である場合

などです。

2.の合理性の有無は次のような事情を総合考慮して判断されます。

(ⅰ)当該雇用の臨時性・常用性
(ⅱ)更新の回数
(ⅲ)雇用の通算期間
(ⅳ)契約期間管理の状況
(Ⅴ)雇用継続の期待を持たせる言動,制度の有無

更新拒否が無効となる場合とは?

解雇権濫用法理(労働契約法16条)が類推適用されるとは,更新拒否が客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当といえないときには,無効となるということです。

もっとも,期間の定めのある労働契約と,終身雇用を前提とした期間の定めのない労働契約とでは,やはりその雇用形態に差があるので,解雇にあたって,非正規従業員を正規従業員と比較して不利益に扱ってもそれだけでは,更新拒否が無効とはなりません。

では,以下において,有期雇用契約の更新の拒否が問題となった裁判例を挙げますので,どのような事情から,解雇権濫用法理が類推適用されるのか,類推適用されたとして,どのような場合に権利濫用として無効となるのかに注意して,参考にしてみてください。

更新拒否について問題となった裁判例

東芝柳町工場事件(最高裁昭和49年7月22日判決)更新拒否無効

これは,契約期間を2ヶ月として採用された臨時工らの労働契約を,5回ないし23回更新をした後に更新拒絶をした事案です。

裁判所は,更新が拒絶された例がないこと,会社が採用の際に長期継続雇用,正規従業員への登用を期待させるような言動をしたこと,期間満了後直ちに新契約の締結の手続をとっていたのではないことから,本件労働契約は,期間の定めのない労働契約と実質的に異ならず,その更新拒絶の有効性の判断に解雇権の濫用法理が類推適用されるとしました。

その上で,本件の更新拒否の理由が就業規則の解雇事由に該当しないとして更新拒絶を無効と判断しました。

日立メデイコ事件(最高裁昭和61年12月4日判決)更新拒否有効

これは,契約期間を2ヶ月として採用された工場の臨時員の労働契約を5回更新した後,更新の拒否をした事案です。

裁判所は,この労働契約を,期間の定めのない労働契約と実質的に異ならないとはいえないとしつつ,臨時員が季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されたものではないことから,契約の継続が期待されていたものであり,その更新の拒否には,解雇権の権利濫用法理が類推適用されるとしました。

その上で,業務上やむを得ない理由により人員を削減する必要があること,その余剰員を他の部門に配置転換する余地もないこと,臨時員の契約更新拒否の前に正規従業員の希望退職者募集による人員削減を図らなかったとしても,これは正規従業員と臨時員の合理的な差であることから,本件の契約更新の拒否を有効としました。

龍神タクシー事件(大阪高裁平成3年1月16日判決)更新拒否無効

これは,契約期間を1年として採用されたタクシー運転手の契約の更新拒否が問題となった事案です。

裁判所は,この会社ではこれまで更新が拒否されたことがないこと,本雇用の運転手に欠員が生じた場合には期間の定めがない契約によって採用された運転手によって補充されることから,本案の契約の実質は期間の定めのない雇用契約に類似するものであって,契約の更新を期待することが合理的であるとしました。

その上で,契約の更新を拒絶することが相当と認められるほどの,経営不振,人員削減の必要性がなかったとして,更新拒絶が信義則に反するとして無効としました。

ネスレコンフェクショナリー事件(大阪地裁平成17年3月30日判決)更新拒否無効

これは,契約期間を1年として採用された,菓子をスーパー等で販売促進することを業務とする者の労働契約を1~11回の更新後,拒否した事案です。

裁判所は,非正規従業員と正規従業員との間には採用の基準やその手続において差があり,就業規則上においても,定年の規定が適用されないことはもとより,賃金等や福利厚生の規定も適用されず,休職制度もなく,年次有給休暇等の扱いにも差が設けられていたことから,正規従業員と非正規従業員との間には何らかの合理的な差異がなかったとは言い難いとしつつ,非正規従業員の業務も重要であることを会社も自認し,教育・研修制度を整備し,継続して雇用することを想定していたこと,新契約書の作成が更新後になったこともあること,入社面接の際,非正規従業員が長く勤務しているとの趣旨の発言をしたことから,更新の期待を抱くことの合理的な理由があったとしました。

その上で,会社が早急に従業員の人員を削減しなければならないほどの客観的事情は認めるに足りないし,非正規従業員に一応,説明をしているものの,会社の態度が一切の妥協の余地のないものであって,十分な協議が行われてはおらず,本件更新の拒否が客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当とはいえず,権利の濫用として無効であると判断しました。

以上の判例をまとめたものが下の表です。
参考にして下さい。

事件名 雇用期間 更新回数 解雇権濫用法理の類推適用が否定されやすい事情 解雇権濫用法理の類推適用が肯定されやすい事情 解雇権濫用法理 更新拒否の効力
東芝柳町工場事件
昭和49年7月22日
2ヶ月 5回~23回 ・本工と異なる就業規則
・本工の労働組合に加入できない
・仕事の種類,内容が本工と同じ
・会社が契約更新を拒否したことがない
・採用の際,会社が長期雇用契約を期待させるような言動をした。
・契約期間満了の都度,直ちに新契約締結の手続をとってはいなかった
類推適用 無効
日立メデイコ事件
昭和61年12月4日
2ヶ月 5回 ・期間満了の都度新しい契約を締結 ・季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されたのではない 類推適用 有効
龍神タクシー事件
平成3年1月16日
1年 0回 ・非正規従業員と正規従業員との勤務条件,賃金体系が異なる ・契約期間満了の都度,直ちに新契約締結の手続をとっていたわけではなかった
・契約締結の際,1年限りで辞めてもらうとの話がでなかった
・正規従業員に欠員が生じた場合非正規従業員を正規従業員に登用し補充した
類推適用 無効
ネスレコンフェクショナリー事件
平成17年3月30日
1年 1~11回 ・正規従業員と非正規従業員とで採用の基準手続に差があった
・就業規則上も定年,賃金,福利厚生について差があった
・契約期間満了の都度,直ちに新契約締結の手続をとっていたわけではなかった
・入社面接の際,会社が長期雇用契約を期待させるような言動をした
・有期雇用の者も重要な業務を担っていた
・有期雇用の者の業務に関する育・研修体制を整備していた
類推適用 無効

更新拒否が権利濫用にあたらないとしても

3回以上更新し,又は雇入れの日から1年をこえて連続して勤務している者には,あらかじめ更新しない旨を明示されている者を除き,更新を拒否するには,期間が満了する30日前までにその予告をすべきこと,労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときはこれを交付すべきことが,厚生労働省による「有期労働契約の締結,更新及び雇止めに関する基準」により定められています。

この基準には,違反について制裁はありませんが,注意してください。