事業承継

事業承継について

経営者自身が自社株式の大半を有していたり、土地などの個人資産を会社や自らの事業の用に供しているような中小企業においては、円滑な事業承継は企業の存続・発展にとって欠かせません。

中小企業の経営者の高齢化が進む現状から、事業承継の円滑化を図る各種制度が整備されつつありますので、それらを把握することが重要です。

中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律

従来は、遺留分という相続人の最低限度の権利を保障するための制度によって、被相続人である経営者の財産が分散されてしまい、相続人の一人である後継者に財産を集中させることが困難でした。

そのような事態に対処するため、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(以下「経営承継円滑化法」)が平成20年10月1日から施行されました(遺留分に関する民法の特例は平成21年3月1日から施行)。

 
遺留分に関する民法の特例、「除外合意」と「固定合意」

  1. 「除外合意」
    後継者が旧代表者からの贈与等により取得した株式等について、遺留分を算定するための財産の価額に算入しない合意(除外合意)が可能となりました(法4条1項1号)。

    これにより、除外合意の対象とした株式等が遺留分算定基礎財産に算入されず、遺留分減殺請求の対象外となるため、相続開始に伴う株式等の分散により、会社の意思決定に支障が生じるリスクを未然に防止することが可能となりました。

  2. 「固定合意」
  3. 後継者が旧代表者からの贈与等により取得した株式等について、遺留分を算定するための財産の価額に算入すべき価額を合意の時における価額とすること(「固定合意」)が可能となりました(法4条1項2号)。

    これにより、遺留分算定基礎財産に算入すべき株式等の価額を当該合意の時における価額に固定することで、将来の株式等の価値上昇に伴う遺留分額の増大を心配することなく経営に専念することが可能となりました。

    また、「除外合意」と「固定合意」は、二者択一の関係にはなく、後継者が旧代表者からの贈与等により取得した株式等の一部を除外合意の対象とし、その余の株式等を固定合意の対象とするというように組み合わせて活用することも可能です。

事業承継税制

後継者に対して、生前に少しでも多くの株式や事業用資産を贈与しておくことは事業承継の円滑化にとって重要です。
しかし、これには「贈与税」が課されることとなります。

そのため事業承継においては、いかに税負担を軽くしながら生前贈与を行うかが重要です。

贈与税には、「暦年課税制度」「相続時精算課税制度」の2種類があり、家族構成や財産構成等を考慮して、どちらが有利であるかを判断する必要があります。

新しい事業承継税制

  1. 非上場株式等についての相続税の納税猶予の制度 後継者である相続人等が、相続等により、経済産業大臣の認定を受ける非上場会社の株式等を被相続人(先代経営者)から取得し、その会社を経営していく場合には、その後継者が納付すべき相続税のうち、その株式等(一定の部分に限る)に係る課税価格の80%に対応する相続税の納税を猶予できることとなりました。
  2. 非上場株式等についての贈与税の納税猶予の制度
    後継者である受贈者が、贈与により、経済産業大臣の認定を受ける非上場会社の株式等を親族(先代経営者)から全部又は一定以上取得し、その会社を経営していく場合には、その後継者が納付すべき贈与税のうち、その株式等(一定の部分に限る)に対応する贈与税の全額の納税を猶予できることとなりました。
  3. その他種類株式等の会社法制を活用した事業承継対策が考えられます。
    (詳細は「種類株式で何ができるか?」で掲載しています。)

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