秘密

営業秘密の重要性

営業秘密は企業の価値の源泉です。

しかし、営業秘密は、一度侵害されてしまうと瞬時に拡散し、その回復が極めて困難となり、また、人的・組織的な管理によらざるを得ないことから、侵害行為の予防には限界があるという性質を内包しています。

経営者としては、このような特性をよく理解した上で、営業秘密の意図しない流失を防ぐことが重要です。

また、特許権等の権利取得になじまない重要な情報資産については、会社内部において営業秘密として管理、活用するのはもちろん、特許権等の権利取得が可能である場合であっても、出願公開によって情報の内容が公になることなどを考慮して、特許権等取得せず営業秘密としての活用を選択することも考えるべきでしょう。

不正競争防止法

不正競争防止法による保護を受けることができる営業秘密とは、1. 秘密として管理されていること(秘密管理性)、2. 有用な情報であること(有用性)、3. 公然と知られていないこと(非公知性)の三要件を満たす、技術上、営業上の情報をいいます。

  1. 秘密管理性が認められるためには、その情報を客観的に秘密として管理していると認識できる状態にあることが必要であり、具体的には、ⅰ情報にアクセスできる者を特定すること、ⅱ情報にアクセスした者が、それを秘密であると認識できること、の二つが要件となります。
  2. 有用性が認められるためには、その情報が客観的に有用であることが必要です。
    反社会的な行為などの公序良俗に反する内容の情報は、有用性が認められません。
  3. 非公知性が認められるためには、保有者の管理下以外では一般に入手できないことが必要です。

不正競争防止法では、営業秘密の不正な取得・使用・開示行為を類型ごとに列挙してそれを「不正競争」と定義し、差止め、損害賠償、信用回復措置を請求することを可能としています。

また、営業秘密の不正取得・領得・不正使用・不正開示のうち、一定の行為について10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金(又はその両方)を科すこととしています(営業秘密侵害罪)。

もっとも、不正競争防止法による上記規制は、原則として事後的な対応であり、一旦流出してしまった営業秘密の損害がすべて回復できるわけではありません。

そのため、物理的・技術的管理、人的管理を中心とした営業秘密の管理が重要になります。

物理的・技術的管理の基本的な考え方は、営業秘密が記載・記録されている書面、記録媒体等の管理にあたっては、媒体、保管庫、保管施設等において、媒体に記載・記録されている情報が秘密であることを認識できる措置を講じ、かつ、権限のない者がその媒体又は情報にアクセスすることができない措置を講じることです。

秘密保持契約

人的管理としては、従業員に対する教育・研修のみならず、就業規則、秘密保持契約等によって、営業秘密を開示した相手方(従業員、退職者、取引先等)に応じてその秘密保持の義務を明確化することが重要です。

会社の役員・従業員は、一般的には、それぞれの就任時の委任契約・雇用契約に基づき、又はこれに付随して信義則上秘密保持義務を負いますが、その内容等を就業規則や個別の契約・誓約書等によって明確化することが望ましいと考えられます。

また、就業規則による秘密保持義務の法的拘束力については、当該役員・従業員が退職したことにより直ちに失われるものではないと考えられますが、退職後に負う秘密保持義務等の範囲を明確化することが望ましいといえることから、退職時に、役員・従業員との間で秘密保持誓約書等を交わすことが重要です。

秘密保持契約に盛り込む内容については、対象となる情報の範囲、秘密保持義務及び付随義務、例外規定、秘密保持期間、義務違反の際の措置等が挙げられます。

従業員との間で秘密保持契約を締結するタイミングとしては、入社時、在職中(特定のプロジェクトの参画時等)、退社時がありますが、入社時の契約では、秘密保持義務の対象の特定は困難ですが、在職中、退社時には具体的な特定が徐々に容易になることを踏まえ、タイミングに応じた秘密保持契約の進化を図る必要があります。

また、取引先に自社の営業秘密を開示する場合には、開示する前に相手方に秘密保持義務を負わせる内容を含む契約を締結する必要があります。

この契約の内容には、取引先に対しても、開示する営業秘密を適正に保護する体制の構築を求めることが重要です。