なぜ、契約書を作成しなければいけないのか?

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契約とは

契約とは、法人を含む人と人との間で何らかの私法上の効果を生じさせる(権利義務を発生させる)合意のことを言います。

例えば、ある物を売りたいという人と買いたいという人との間で「売りたい」「買いたい」という意思表示が合致すると、売主はその物を引き渡す義務と代金を請求できる権利を取得し、買主は代金を支払う義務と物を請求できる権利を取得するという私法上の効果が生じます。

このように、契約は契約書という書面がなくても成立し、私法上の効果(権利義務)は発生するのが原則です。

また、当事者間で意思表示の合致があれば、契約の内容も当事者間で自由に決めることができるのが原則です(契約自由の原則)。

契約は、基本的には当事者がお互いに納得していれば(意思表示が合致していれば)、契約書がなくても成立するし、内容も自由に決定できるのです。

契約書を作成する必要性

では、契約書を作成する必要性はどこにあるのでしょうか。
それは後日の紛争を防止する点にあります。

契約時に口頭で意思表示が合致していたとしても、後日「そんな契約はした覚えがない」と言われたり、「契約はそんな内容ではなかった」などと言われたりして紛争が発生する可能性があります。

契約書を作成することによって、そのような紛争ができるだけ生じないようにするのです。
契約書の作成は契約の成立要件ではありませんが、契約の成否及び内容についての紛争を防止し、かつ、契約によって生じた私法上の効果を確実に実現させるために必要なのです。

一番いけないのは、「契約書には記載されていないけど、実際には○○のようにしましょう。」というケースです。

そのような場合は実際に予定されている「○○」という部分を契約書に記載しておけば良いだけなのです。

にもかかわらずそのような記載をしないということは、一方当事者に敢えて「○○」を記載したくない理由があり、他方当事者は後日「○○」のようにしてもらえず紛争が生じるということがかなりの確率で起こりうると考えて良いでしょう。

契約書作成の必要性が高まっている現状

特に、昨今は取引内容が複雑化している傾向にあるので、契約書において契約内容を整理して明確化しておくことが、取引関係を良好に維持していく上で非常に重要となってきています。
契約書を作成することこそが取引する際に信頼をおかれる根拠になるともといえるでしょう。

また、日本でも欧米ほどではないですが、紛争を裁判手続で解決しようとする考え方が従前よりも増えてきていますが、裁判で重要な証拠となるのが契約書、覚書、合意書等の書面です。

裁判において、「契約書には記載されていないが、口頭では合意があった」と認められることはほとんどないと言っても過言ではありません。

このような裁判手続を利用する現代の傾向からしても、契約書の必要性は非常に高まってきているといえます。

このような現代においては特に、取引内容のほとんど全てを契約書等に書面化しておく必要があるのです。

契約書作成に対する抵抗感をなくすべきであること

ところが、そのような現代においても取引をする際に契約書を作成しないケースが散見されます。
具体的には、

  1. 契約書を作成している時間がない、そのような時間は無駄であると考えているケース
  2. 契約書を作成してしまうと、後で取り決めた内容を臨機応変に変更できなくなるので取引がしにくくなってしまうと考えているケース
  3. 契約書の作成の仕方がわからないし、作成したとしてもその後どのような場合に契約書が生きてくるのかわからないというケース

などが考えられます。

まず、1. のケースは、取引当事者間でこれまで紛争が起きたことがなく契約書を作成する必要性を感じていない方に見られます。

しかし、多くの方が各種保険に入るのと同じで、紛争が起きる前に紛争が起きた場合の対策をあらかじめ準備しておく必要があるのです。

特に取引内容が複雑化し契約後の紛争が発生し易くなっている現代においては、そのような紛争が発生する前に契約書によって十分に備えをしておく必要があるのです。

次に、2. のケースは、取引当事者間で紛争が起きたことがないだけでなく、良好な取引関係、信頼関係が継続していて契約書に縛られない方が取引をし易いという方に見られます。

確かに、常に変容する状況に対して、当事者間でその都度口頭で協議して取引内容を変更していければ、対応し易いでしょう。

しかし、状況の変化に対して常に当事者間で折り合いがついて紛争になることなく取引が継続できるとは限りません。

やはり、1. のケースと同様で、いつ当事者間で意見が分かれて紛争が生じてしまうかわかりませんので、あらかじめ契約書によって準備をしておく必要があるのです。

また、契約書の中に、後日内容を変更できる条項や、変更する方法等の条項を入れておけば、契約書作成時点で予想していなかった事態に柔軟に対処することもできます。

3. のケースは、契約書の作成の仕方をわかってしまえば契約書を作成しない理由はなくなります。

また、契約書の作成の仕方がわかるということは、同時に、紛争が生じたときに契約書のどの条項が生きてきて、どのように解決できるかということも理解できるということになりますので、やはり契約書を作成しない理由はなくなります。

以上のように、取引内容が複雑化し、しかも取引に関係する状況変化が著しい現代においては、紛争が発生する可能性が高まっており、契約書を作成する必要性がますます高まっているのです。

契約書作成の一般的な注意点

契約書には後日の紛争を防止する意味がありますので、契約書の内容は、当事者だけでなく第三者が見ても疑義が生じないよう明確にしておく必要があります。
その上で、当事者がその内容を確認して署名押印することが必要です。

また、契約書は契約したことを証する書面である以上、その作成日付を明記する必要があります。
契約書作成の際の注意点はいくつかありますが、重要な点は

1.当事者の署名押印
2.作成日付の明記
3.契約内容の明確化 です。

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