セクハラで会社が追うべき責任と防止するためにとるべき対策とは?

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この記事では以下の内容を解説しています。


1.セクハラとは
2.対価型セクシャルハラスメントとは?
3.環境型セクシャルハラスメント
4.セクハラがあった場合に負う会社の責任
5.セクハラをなくすために会社は何をすればよいのか
6.セクハラを防止するためにあらかじめしておくこと
7.セクハラの相談がされた後にするべきこと
8.再発防止のためにするべきこと
9.セクハラに対応するに際して会社が注意すること


セクハラとは

セクハラとは、相手が嫌がっているにもかかわらず行う性的言動(性的な内容の発言、行動)をいいます。

性的な内容の発言には、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等が含まれ、性的な行動には、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触れること、わいせつ画像を流布すること等が含まれています。

どの様な行為がセクハラと判断されるのか?

厚生労働省は、セクハラを対価型セクシャルハラスメント、環境型セクシャルハラスメントとの2つに分けてそれぞれについて具体的な例を挙げています
(平成18年10月11日厚生労働省告示第615号「事業主が職場における性的な言動に基因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」以下において指針といいます)。

対価型セクシャルハラスメントとは?

対価型セクシャルハラスメントとは、セクハラに対して被害者がとった対応によって、被害者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることをいいます。

対価型セクシャルハラスメントの例として、指針には以下のものがあげられています。

①事務所内において、事業主が労働者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため解雇すること

②出張中の車内において上司が労働者の腰、胸等に触ったが、抵抗されたため、不利益な配置転換をすること

③営業所内において事業主が日頃から労働者に係る性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、労働者を降格すること

環境型セクシャルハラスメント

環境型セクシャルハラスメントとは、セクハラによって被害者の働く環境が悪化し、能力を発揮できないないなど働くことに見過ごすことのできない程度の支障が生じることをいいます。

環境型セクシャルハラスメントの例としては以下のものがあげられています。

①事務所内において上司が労働者の腰、胸等に度々触ったため、当該労働者が苦痛を感じてその就業意欲が低下していること

②同僚が取引先において労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、当該労働者が苦痛を感じて仕事に手がつかないこと

③労働者が抗議しているにもかかわらず、事務所内にヌードポスターを掲示しているため、労働者が苦痛を感じて仕事に専念できないこと

セクハラがあった場合に負う会社の責任

会社はセクハラをした者の使用者として使用者責任や、労働契約上の職場環境配慮義務違反の債務不履行責任を負う可能性があります。

使用者責任とは、会社は人を雇い働かせることによって利益を得ているのですから、そこから生じる不利益についての責任も会社に負わせましょうという考え方です。

労働契約上の職場環境配慮義務違反の債務不履行責任とは、労働契約において会社は労働者に賃金を払う義務とともに、働きやすい職場環境を保つよう配慮するべき義務を負っており、セクハラに対して適切な措置をとらなかった場合などにはこの義務を履行しなかったとして会社は債務不履行責任を負うということです。

会社に職場環境配慮義務違反の債務不履行責任が認められた裁判例には、セクハラの被害者がセクハラをした者との夜勤をやりたくないと聞きながらその理由を尋ねず、なんらの措置もとらなかった会社の責任を認めたものがあります。

この会社は毎月勉強会や研修会を行うなど、職員に対する指導監督を尽くした旨を主張しましたがこれだけでは責任を尽くしたとはいえないと判断されています
(津地裁平成9年11月5日判決労働判例No729p54)。

また、従前セクハラ防止についてなんら具体的な防止策を取っておらず、公的機関からセクハラがあるようであるとの事実の報告をうけ、セクハラを行った者を交えた支店長、所長会議をしたにもかかわらず、会議後もセクハラが行われた会社についても会社は責任を尽くしたとはいえないと判断され、会社の債務不履行責任が認められました
(広島高裁平成16年9月2日)。

セクハラをなくすために会社は何をすればよいのか

指針は、セクハラをなくすために会社がするべきことを定めています。

以下において、指針が示す会社がすべきことを紹介します。

会社がこれらの措置を取っていなかったとしても、会社はそのことのみを理由として損害賠償責任を負うことはありませんが、行政指導をされる可能性があり、企業名が公表されることもあります。

また、会社がこの規定に従った対応をきちんととっていれば、使用者責任等の責任を免れます。

セクハラを防止するためにあらかじめしておくこと

(1)就業規則、社内報、パンフレット、社内ホームページや研修、講習等で、どのような言動をセクシャルハラスメントというのか、セクシャルハラスメントがあってはならないとの会社の方針を明確に、管理職を含む労働者に知らしめ、理解させること。

(2)セクハラをおこなった者に対しては厳正に対処する旨と、対処の内容を就業規則等の服務規律等を定めた文書に規定し、管理職を含む労働者に知らしめ、理解させること。

(3)セクハラの相談に応じ適切に対応するために必要な以下の体制を整備すること。

・相談担当者をあらかじめ定める
・相談に対応するための制度を設けること
・外部の機関に相談の対応を委託すること
・相談を受けた際、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みをつくること
・相談を受けた際、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること

セクハラの相談がされた後にするべきこと

(1)セクハラの事実関係を迅速・正確に把握すること。

 事実関係を迅速・正確に把握しているとみとめられる例

・ セクハラを受けたと会社にうったえる者とセクハラをしたとされる者の双方から事実関係を確認し、主張に不一致があり、十分な事実の確認ができない場合には第三者からも意見を聴く等の措置をとる。

・ 事実関係を確認しようとしたが、それが困難であった場合に、調停の申請を行うその他中立的な第三者機関に紛争処理を委ねる。

(2)セクハラの事実を確認した場合

・セクハラをした者に対して、就業規則等の服務規律等を定めた文書に定めた規定に基づき懲戒等の措置をし、被害者と行為者の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働契約上の不利益の回復を図る。

・調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置をとること。

再発防止のためにするべきこと

改めて、社内報、パンフレット、社内ホームページ等で、セクシャルハラスメントがあってはならないとの会社の方針、セクハラを行った者については厳正に対処する旨を掲載し、配布する、研修、講習等を行う。

セクハラに対応するに際して会社が注意すること

被害者や相談者、行為者のプライバシーが侵害されないようにすること。

セクハラの調査について、協力した者や被害者が不利益な取扱いを受けないよう、労働者に知らしめ、理解させること。

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