インターネットを利用した取引について

この記事では、以下の内容について解説しています。


  • インターネットを利用した取引における契約の成立
  • インターネット画面の誤操作などによって申込みや承諾が行われた場合

インターネットを利用した取引における契約の成立

売買契約などにおいて、契約は、一方の当事者から契約の申込みの意思表示があり、この申込みに対して承諾の意思表示がなされることによって成立します。

そして、これが対面でなされる場合には、その時点で契約が成立し、契約の成立などが問題となることは多くありませんが、双方が遠隔地に居住している場合などについては、その契約の成立時や、そもそも契約が成立したかどうかが問題となる場合があり、これについては、民法によって、契約の申込みを受けた者が承諾の意思表示を発したときと定められています(民法526条1項)。

しかし、電子メールを利用して承諾の意思表示が行われた場合、電子メールがシステムのトラブルなどで届かないということもあり、それがもとでトラブルになることも少なくないため、「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(電子消費者契約法)」によって、承諾の意思表示が電子メールを用いてなされた場合には、その意思表示が相手の元へ到達したときとされています(同法4条、もっともこの「到達」の意味について、相手のメールサーバーに到達したときという説と、相手のメールクライアントにダウンロードされたときとの説に分かれています)。

インターネット画面の誤操作などによって申込みや承諾が行われた場合

インターネットを利用した取引においては、1回のクリックのみで注文が完了してしまうこともあり、簡単に取引をすることができる反面、ボタンなどを誤ってクリックしてしまい、意図しない商品の注文が決定してしまうこともあります。

一般に、注文者にその商品を購入する内心の意思がないのに、その商品を購入するという意思表示がなされた場合、意思表示に錯誤があるということになり、注文者は原則として契約の無効を主張することができます(民法95条)。

しかし、表意者である注文者がそのような意思表示をしたことについて、重大な過失があった場合には、契約の無効を主張することができません(同法95条但し書き)。

これを先の誤操作の例に当てはめると、ボタンを誤ってクリックしたことについて、注文者に重過失があった場合には、注文者はその契約の申込みが無効であることを主張できないこととなります。

このような注文者(消費者)を保護するため、電子消費者契約法では、上記のようなケースでは、民法95条但し書きを適用しないことと定めており、注文者(消費者)が誤ってボタンをクリックしたことが重過失にあたる場合であっても、注文者は契約の申込みの無効を主張できることとなりました(電子消費者契約法3条本文)。

もっとも、契約の相手方である事業者が、インターネット画面を通じて、消費者の申込み等の意思の有無について確認を求める措置を講じた場合や、消費者から事業者に対してそのような措置を講じる必要がない旨の意思の表明があった場合には民法95条但し書きの適用があるとされています(同3条但し書き)。

そのため、インターネットを通じて消費者と取引を使用とする場合には、錯誤を主張されぬよう、取引内容の確認画面等を設けて、最終的な意思確認を求める措置を講じることが必要です。

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