インターネットに関する法律問題

この記事では、以下の内容について解説しています。


  • ホームページ作成に関する注意事項
  • 著作権侵害について
  • 肖像権侵害、パブリシティ権侵害について
  • ドメインを取得するに当たって

ホームページ作成に関する注意事項

インターネットを利用したコミュニケーションが高度に発達した現在、消費者や取引先企業は、まず情報収集の手段としてインターネットを用いるでしょうから、自社PRのためにHPを持つことは珍しくなく、むしろ現在では自社HPを持っている企業の方が多いといえるでしょう。

このHP作成にあたっては、自社の基本的な情報から始まって、PRしたい情報を盛り込んでその内容となるページを作って行くこととなりますが、その作成に当たっては、いくつかの注意事項があります。

著作権侵害について

HPを作成、公開するに当たっては、そのHPの内容が他人の著作権を侵害していないかどうか注意しなければなりません。

著作権とは、著作者が自己の著作物を排他的、独占的に利用する権利と定義され、その内容は多岐にわたりますが、HPを作成、公開するにあたり最も問題となりがちなのは、このうち複製権と公衆送信権の侵害でしょう。

すなわちHPの内容を作成するに当たって、まず文章等の言語的な表現が記載されることと思いますが、その他画像や写真を用いることが多いでしょうし、場合によっては音楽が流れるようにするケースもあるかもしれません。

その際に、他人がどこかで書いていた文章を参考にしたり、インターネット上で見つけた画像や写真を使用したり、知り合いの写真を利用したり、インターネット上で見つけた音楽ファイル、極端な例としては、CD等から自分のパソコンに取り込んだ音楽ファイルを利用しようとすることがあるかもしれません。

しかし、このような文章のような言語的なもの、絵画などの美術品、音楽、写真などについては、「人の思想または感情を創作的に表現したもの」、すなわち「著作物」として著作権法による保護の対象となるケースが多いため、それらを利用するに当たって各著作権者の許諾を得ていれば問題ありませんが、許諾を得ることなく自分のパソコン内に保存すれば複製権の侵害となり得ますし、こうして作成したHPをサーバーにアップロードすれば、公衆送信権の侵害となり得るのです。

もっとも、著作権侵害となるためには、利用しようとしている対象が「著作物」でなければなりません。

そのため、その対象が「人の思想または感情を表現したもの」でなかったり、または「創作性が認められるもの」でなかったりする場合には、それは「著作物」ではありませんから、著作権侵害とはなり得ません。

また、対象が著作物であったとしても、その利用方法が、著作権法が定める「引用」(著作権法32条)に当たる場合には、著作権侵害とはなりません。

この「引用」とは、報道、批評、研究等の目的のために、他人の著作物を自己の作品に採録することと定義されていますが(中山信弘-「著作権法」256頁)、「公正な慣行に合致するもの」であり、「報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われること」が必要であり、また「引用された箇所とそうでない箇所とが明瞭に区別されること」、「引用された箇所がその他の部分に対して従たる関係にあること」が必要とされています。

そのため、他人の著作物を引用するに当たっても、それが著作権法上の「引用」の要件を充たすかどうか十分に気を付ける必要があります。

このように、何かを参考にする場合、それが「著作物」にあたるのかどうか、その利用方法が著作権侵害にあたるのかどうか、著作物を引用しようとする場合に、その方法が著作権法で認められる「引用」に該当するのかどうか等を十分検討しなければなりませんが、その判断にあたっては、明確に判断できるものばかりでなく、微妙な判断を要する場合がほとんどです。

そのため、これらの判断をするに当たっては、弁護士等の専門家に相談した方が安全でしょう。

肖像権侵害、パブリシティ権侵害について

人物が写っているような写真をHPに使用する場合には、更に複雑な問題があります。

まず、写真も撮影者の「著作物」となり得ますので、「著作物」に該当する場合、それをHPなどに利用するためには、著作権者である撮影者の承諾をとる必要があります。

また、写真が人物を写した者である場合、その被写体である者の肖像権の侵害が問題となります。

肖像権とは、みだりに自己の容姿容貌を撮影、描写、公開されない権利で、人格権の一つとして認められています。

そのため、他人の容姿を撮影した写真を、その人の許可なくHP等に掲載して公開した場合、肖像権侵害となる場合があり、その場合当該写真の使用の差し止め、不法行為に基づく損害賠償請求がなされる可能性があります。

また、使用しようとしている写真の被写体が芸能人などの有名人であった場合、肖像権侵害だけでなく、加えてパブリシティ権の侵害が問題となります。

パブリシティ権とは、氏名や肖像から生じる経済的利益ないし価値を排他的に支配する権利とされますが、有名人の氏名や肖像には顧客誘引力があることから、これによる経済的価値が保護されるべきとして、パブリシティ権が認められています。

そのため、有名人の写真が無断でHPなどで使用、公開された場合、当該有名人の経済的利益や価値を侵害することとなりますので、当該写真の使用の差し止めや、不法行為に基づく損害賠償請求がなされる可能性があり、また損害賠償請求の金額も、パブリシティ権の内容が、有名人の顧客誘引力等に関する経済的価値であることから、肖像権侵害のものに比べて高額となる場合が多いでしょう。

以上のとおり、著作物にあたる人物を写した写真を使用する場合には、著作権者である撮影者、被写体である人物双方の許可を得る必要がある点で注意が必要となります。

ドメインを取得するに当たって

自社のHPや、販売する商品、提供するサービスのHPを作成、公開するに当たって、企業であれば、通常自らドメイン名を取得することとなると思いますが、これについても注意が必要な点があります。

ドメイン名とは、インターネットにおいて個々のコンピュータを識別するための符号のことですが、このドメイン名は原則として誰もが自由に登録することができ、通常であれば企業名だったり、自社が販売している商品名などのわかりやすい名称を登録することが多いでしょう。

しかし、集客が見込めるからといって、あえて既に公開されており、多数の閲覧者がいることで知られているサイトのドメイン名と1文字違いだったり、酷似したドメイン名にしようとする場合には注意が必要です。

不正競争防止法では、「不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為」は「不正競争」に当たるとされており、上記のような行為が同法違反となる可能性があるからです。

当該ドメイン名の利用行為が不正競争に当たる場合、そのドメイン名の使用行為について、類似したドメイン名を既に利用していた他人からそのドメインの利用について差止請求がなされたり、損害賠償請求がなされる可能性があります。

なお、あるドメイン名が先に登録されている場合、同一のドメイン名は重ねて登録することができず、先に登録したものが優先されるため、自分が登録しようと思ったドメイン名が既に登録されていた場合、残念ながらそのドメイン名を登録することができないこともあります。

もっとも、既にそのドメイン名が他人によって登録されていたことが偶然であれば仕方ありませんが、悪意をもって必要もないのにあえて登録していたり、ひどい場合には、後で当該ドメイン名の買取りを迫るために登録しているケースもあります。

このような場合には、逆に相手方の登録、利用行為が「不正競争」に該当する可能性があり、その場合にはそのドメイン名利用の差止請求や、使用料相当額の損害賠償請求などをすることができることになります。

PREV
NEXT