種類株式で何ができるか?

種類株式とは

会社法は、一定の範囲と条件のもとで、権利の内容の異なる複数の種類の株式を発行することを認めています。

これは、株式の多様化を認めることで、株式による資金調達の多様化と支配関係の多様化の機会を株式会社に与えるためです。

種類株式として認められているのは以下の内容です。

  1. 剰余金の配当について、他の株式よりも優先または劣後させること
  2. 会社の残余財産の分配について、他の株式よりも優先または劣後させること
  3. 株主総会において議決権を行使できる事項を、全部または一部制限すること
    (議決権制限種類株式)
  4. 株式を譲渡する場合に会社の承認を必要とすること(譲渡制限種類株式)
  5. 株主が会社に対して、その株式の取得を請求することができること
    (取得請求権付種類株式)
  6. 一定の事由が発生した場合を条件として、会社がその株式を取得することができること(取得条項付種類株式)
  7. 株主総会決議により、会社がその株式を全部、強制的に取得できるようにすること(全部取得条項付種類株式)
  8. 株主総会や取締役会で決議すべき事項のうち、これらの決議以外に種類株主総会の承認を必要とすること(拒否権付種類株式)
  9. 種類株主総会において取締役・監査役の選任ができるようにすること
    (選解任種類株式、委員会設置会社と公開会社には認められない)

種類株式を活用して、資金調達、買収防衛策などの経営権の確保、さらに事業承継対策などが考えられます。

資金調達

ベンチャー企業にとって、普通株式発行による資金調達は、経営者(オーナー)の持株比率を下げることになり、経営が不安定なるおそれがあります。

このような場合に、経営権ではなくキャピタルゲインを目的とする投資家に対しては、議決権を与えない、あるいは利益処分案や営業譲渡など重要な事項についてのみ議決権を与える議決権制限種類株式を発行すれば、資金調達を図るベンチャー企業と投資家との利益を調和することができます。

敵対的買収に対する防衛策

代表取締役の選任や株式の発行、組織再編行為などの重要事項に関し、拒否権付種類株式(いわゆる「黄金株」)を発行しておくことは、少数の株主が会社の支配権を掌握するために用いるだけでなく、買収防衛策として用いることも考えられます。

また、種類株式の組み合わせも可能なので、拒否権付種類株式に譲渡制限を加えたりすることによって、敵対的買収に対する防衛策とすることも可能です。

このような拒否権付種類株式は、非常に強力な拒否権で、一般株式を排除することにもつながりかねない権限であることから、上場制度との関係では、証券取引所が一定の制限を設けているので注意が必要です。

全部取得条項付種類株式は、会社がその株式を全部、強制的に取得することができるもので、その当該種類株式の取得の対価としては、株式、社債、新株予約権その他の財産を交付することができます。

そのため、会社は、強制的に普通株式や他の種類株式(無議決権株式など)に転換できる種類株式を発行することができることになるため、これをもって、敵対的買収に対する防衛策とすることも考えられます。

もっとも、このような全部取得条項を発行済種類株式に加えることは、その種類株主などに対し予測しない不利益を与えるため、株主総会の特別決議および種類株主総会の特別決議による定款変更が必要となります。

事業承継対策

株式が相続財産となっていた場合に、これを議決権株式と議決権制限株式に分け、会社を担っていく後継者たる相続人には議決権株式を、それ以外の相続人には議決権制限株式を相続させれば円滑な経営権の承継が実現できると考えられます。

経営者が自社株式の大部分を後継者に譲るけれども不安が残るという場合には拒否権付種類株式を保有し、後継者の経営に助言を与える余地を残しておくといった方法や、重要な決定事項に関し、後継者の意思に反する決定が下されそうになった時のために、自らが保有する株式を拒否権付種類株式にしておくといった利用方法が考えられます。

少数の株式を有する株主について相続等が発生することで株式が分散化され議決権の確保が困難となるような事態に対処するため、全部取得条項付種類株式によって分散化する株式を集約化することが考えられます。

後継者に対してすべての普通株式を譲渡したとしても、旧経営者が取締役・監査役の選解任種類株式を保持することによって、役員等の選解任権のみ掌握することもできます。

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