この記事では、以下の内容について解説しています。
- 新しい決済手段の普及
- 資金決済法の対象
- 規制の内容
新しい決済手段の普及
近年の情報通信技術の発達に伴い、チャージ式のICカードなどに代表される電子マネーや、インターネット上のサービスを受けるために、ユーザーが予め有償でポイントなど仮想の通貨を購入するようなプリペイド式の決済方式取引の資金決済など、その資金決済の方法も電子化されてきており、また普及しつつあります。
そのため、既にインターネット上で商品を販売したり、サービスを提供する事業を行っている業者や、これから始めようとする業者では、これらの決済手段の導入を検討することも今後増えてくるでしょう。
しかし、これらの決済手段を導入する場合、その内容によっては「資金決済に関する法律(資金決済法)」の規制の対象となる可能性があるため、注意が必要です。
同法は、近年更に増えつつある多様な資金決済手段について、消費者保護を図るため、平成22年4月1日から新しく施行された法律です。
資金決済法の対象
上記のような決済方法を導入する場合、資金決済法の対象のうち「前払式支払手段発行者」(資金決済法2条1項)として同法の規制を受けます(同法では資金移動業、資金精算業も規制を受けますが、ここでは割愛します)。
「前払式支払手段」とは、
- 金額等の財産的価値が記載、記録され、
- 金額、数量に応じた対価を得て発行される証票等、番号、記号その他のものであり、
- 代価の弁済等に使用されるもの
- 届出、登録義務
まず自家型前払式支払手段発行者は、各年の3月末日及び9月末日において、基準日未使用残高(基準日時点における発行した全ての前払式支払手段の未使用残高をいいます)が、発行を開始してから初めて1000万円を超えたときは、当該基準日の翌日から2カ月以内に内閣総理大臣に対して届け出なければなりません(同法5条)。
これに対して、第三者型前払式支払手段発行者は、全て内閣総理大臣の登録を受けた法人でなければなりません(同法7条)。
- 表示または情報の提供義務
カード等の有体物が利用者に交付される場合には、発行者はそれ自体に「発行者名」、「支払可能金額」、「利用期間または期限」、「苦情対応窓口」等の情報を表示しなければならず、カード等の有体物が交付されない場合は、別途インターネット等で表示しなければなりません(同法13条)
- 発行保証金の供託義務
前払式支払手段発行者は、毎年3月末日及び9月末日の基準日までに発行した前払式支払手段の基準日未使用残高を計算し、その金額が前払式支払手段を発行してから初めて1000万円を超えたとき、原則としてその2分の1以上の金額を発行保証金として供託しなければなりません(同法14条)。
ただし、発行保証金保全契約や、発行補償金信託契約を利用する場合はこの限りではありません(同法15、16条)。
- 利用者への払戻しの禁止
前払式支払手段の発行者は、その事業を廃止する場合を除いて、原則として利用者に対して払戻しをすることが禁止されています(同法20条、なお事業を廃止する場合は必ず払戻しをしなければなりません)。
もっとも、同法の要件をみたした一定の少額の払い戻しについては例外的に認められます。
- 情報の安全管理義務
近年では、前払式支払手段が電子化されていることが多いことから、前払式支払手段発行者には、その情報を安全に管理するために必要な措置を講じる義務が課されています(同法21条)。
- 金融庁による監督
前払式支払手段発行者には、帳簿を作成し、保存する義務が課されており、届出、登録した後も、半年に1回金融庁に対して報告書を提出する義務があり、また金融庁から資料の提出命令を受けたり、立入り検査をうけるなどの監督を受けます(同法22~24条)。
を指します(同法3条1項1号)。
そして「前払式支払手段発行者」とは、「自家型発行者」(同法3条6項)と「第三者型発行者」(同法3条7項)とを合わせた概念ですが、このうち「自家型」とは、発行者が自ら、前払式支払手段の利用者に商品やサービスを給付するものを指すのに対して、「第三者型」とは、発行者以外の加盟店等が利用者に対して商品やサービスを提供した上で発行者から資金を回収するというものです。
以前から、紙型のもの(商品券等)や、IC型の前払式支払手段については、「前払式証票規制法」(通称プリペイドカード法)という法律によって規制されていましたが、資金決済法では、これらに加えてサーバ型前払式支払手段(カードやICチップ等に価値が記録されず、パソコン等のサーバに価値を記録するタイプ)も規制の対象とされました(同法の施行と同時にプリペイドカード法は廃止されています)。
なお、企業が、自社が提供するサービスなどについて「ポイント」を付与することが多く見られますが、このポイントシステムのうち、無償すなわちあくまで「おまけ」として提供されるものは資金決済法の規制の対象とはなりませんが、有償でも購入できるような「ポイント」を発行するシステムについては同法の規制の対象となりますので注意が必要です。